大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(オ)276 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人、篠田一丸の上告理由は末尾に添えた別紙記載の通りである。

(一)論旨第一点は、原判決には憲法第二四条および民法第一条ノ二に違反した

不法がある、というのであるが、本件法律問題の焦点は、上告人(控訴人、債権者)

Aの夫DがAを代理して被上告人(被控訴人、債務者)Bと本件土地に関する取極

めをした、という事からである。原判決の認定によれば、右Dは昭和二〇年五月中

被上告人に対しD一家は疎開先から上京の意思がないから被上告人が本件土地を地

主Eから賃借してもよい旨を話し、その後昭和二一年八、九月頃被上告人が本件土

地を借受けたことを話した際Dはこれを諒承して何らの異議を述べず、翌昭和二二

年中被上告人方に宿泊したDが被上告人に対し同人の賃借した土地の境界を明かに

するため本件土地の図面の提供を約束し、又その頃本件土地に在る水道に関する権

利の譲渡を承諾していた、ということになつている。そして原判決は、Dは上告人

を代理して右一連の行為により被上告人の本件土地の賃借につき異議を述べないこ

とを約束しにものと認めたのである。そこで論旨は、右の認定が民法の旧規定第八

〇一条第一項「夫ハ妻ノ財産ヲ管理ス」等を適用した結果であるとして、右等の法

条は前記憲法および民法の新規定に反する、と非難する。しかし原判決は民法第八

〇一条を引用しているのではなく、戦災前からの上告人とその夫の浴場経営事情お

よび浴場建物と敷地との売買賃借関係を綜合して、上告人の夫Dにおいて上告人経

営名義のF湯およびその敷地たる本件土地のことについて「控訴人(上告人)を代

理する権限があつたものと推認せられ従つてDの右認定の行為は妻たる控訴人(上

告人)に代つてなしたるものであると疏明せられる」と認定したのである。論旨は

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前記の通り右の判旨を民法旧規定第八〇一条の適用なりと仮定して右法条の違憲を

問題にするが、もしそうであるにしても前記Dの行為は日本国憲法施行前の事と思

われるし、また前記の通り原審は民法旧第八〇一条を適用したのではなく、結局諸

般の事情を綜合してAのための夫Dの代理権限を認定したものと考えられ、そして

その認定は相当と思われるのであつて、論旨は理由がない。

(二)論旨第二点は、上告人に送達された原判決の正本に裁判官の氏名の記載の

ないことを指摘し、上告人は完全な判決正本の送達を受けざることに帰し、民訴法

第一九三条違反である、と主張する。よつて職権で調査すると、原判決原本には裁

判長判事松田二郎判事岡崎隆判事多田威美の署名捺印があるから、上告人に送達さ

れた同判決正本に判事の氏名の記載がないとすれば、右正本を作成した裁判所書記

官がこれを脱漏したものと思われるか、何時でもその補正を求め得べきものであり

かゝる脱漏があつたとて直ちに正本の送達なしとは言えないのであつて、論旨は理

由がない。

よつて、民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条に従い、主文の通り決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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